内服薬によるせん妄

せん妄は意識障害の一種で、意識はあるがもうろうとした状態で、目は開いているが焦点が定まらず、つじつまの合わないことを言うのが特徴です。比較的高齢者に多く、患者さんが何らかの病気で入院したり、手術を受けた後に急におかしなことを言いだしたり、幻覚が見えたり、興奮したり、安静にできなくなったりした状態です。入院患者さんの10~30%位に発症するといわれており、珍しい病気ではありません。(このうちの10~40%が薬剤性せん妄と言われています)

薬剤性せん妄:
内服薬が原因のせん妄を「薬剤性せん妄」と言います。広島市民病院、精神科の和田健先生はせん妄で見られる状態は、

1)ぼんやりしていたり、もうろうとしている、2)言う事のつじつまが合わず、おかしなことを訴える、3)物忘れがひどい。4)夜眠らずに興奮したり、ぼけたように見える、5)症状が変動しやすく、夜間に不安定になってくることが多い、6)点滴チュウブを自分で抜いてしまったり、安静が保てないなど

と述べておられます。

せん妄の診断基準:
A. 注意および認識の障害:注意を向たり集中することが難しい。 周りの状況をきちんと理解することが難しい。

B. 症状が短期間のうちに出現し、変動する傾向がある。

C. 認知の障害の付加

D. A.C.は他の精神疾患では説明されない。

E. 身体疾患や物質の中毒(ここでは薬剤)が原因となっている。

せん妄を起こしやすい薬:
1) ベンゾジアゼピン系薬剤:抗不安作用、鎮静作用、催眠作用、筋弛緩症、抗痙れん作用がありますが、せん妄が起こりやい薬で使用に注意が必要です。睡眠薬として処方されることが多く、安定剤としても処方されております。習慣性もあり、医師もできるだけベンゾジアゼピン系薬剤は処方しないよう指導されております。

2)抗アレルギー剤:アタラックス、レスタミンなど第一世代の薬)

3)鎮痛剤:麻薬性鎮痛剤(モルヒネ)、消炎鎮痛解熱剤:「ボルタレン、ロキソニン」など。

4)消化器系薬剤:「アトロピン、スコプラミン、タガメット」など。

5)副腎皮質ホルモン:

高齢者がベンゾジアゼピン系睡眠薬を服用しますと、薬が蓄積しやすいだけでなく睡眠薬自体の感受性が亢進しているといわれ、日中の眠気、フラツキ、脱力の症状が出やすく、日中の覚醒度の低下で昼夜のリズムが崩れることで、夜間せん妄につながるとされております。転倒のリスクも高まります。高齢者にせん妄の症状が出たときは主治医にご相談下さい。せん妄は手術時の全身麻酔から覚めるとき、高齢者に限らず若い人にもしばしば認められます。