不安と混乱

不安と混乱
認知症になると、本人も不安を感じ、混乱することを実感します。
認知症の進行の一例を挙げると、まず時間の感覚が亡くなり、次に場所の感覚、人物の認識能力の順になくなります。時間の感覚がなくなりますと、過去を順序立てて思い出せず、過去と今の区別がつかなくなります。それでも感情や自意識は健在ですから、状況が飲み込めず失敗をしてしまう自分をもどかしく思い、自信をなくしてしまいます。このために心が不安定になり、意思の疎通がさらに難しくなることもあります。認知症の症状によって当事者がこのような不安を抱くことがあるのを周囲の人が理解するかしないかで、介護の質が大きく変わってきます。
認知症になった人が、認知症になると健常時と比べて、どこがどのように変わったのかを正しく分析できなければ、上記のように伝えられません。認知症を理解する上で非常に大切なことを長谷川先生は自身の経験で述べておられます。
認知症の早期診断
認知症の早期診断を受けることで、これからのことを自分でも、そして家族とも考えることができます。
「自分は認知症かな」と思っても、当人は恥ずかしさや不安から病院に行かず、周囲の人も、気遣ったつもりで病院に連れていくのを先延ばしにする。その結果認知症の症状を悪化させ、できるはずだった対処法を受けるタイミングを失って後悔するケイスは少なくありません。認知症は恥ずかしいことではないのです。早めに医師に相談しましょう。早期診断を受けるメリットの一つは、自分の今後を家族と一緒に考えられる点です。自分に判断する能力があるうちに、医療や介護サービスの利用、財産管理の方法などを、自らの意思で決めておけるのです。
認知症は高齢になれば、誰もがなる可能性のある病気です。決して恥ずかしい病気ではありません。自分の人生をどのように生きるか、判断ができるうちにきちんと決めておくことが大切です。 (長谷川和夫著:認知症でも心は豊かに生きている。中央法規より)