アルツハイマーと脳

アルツハイマーになると、数年の間で脳の重さが急速に減少してしまいます。すると、それに対応できずに、認知症を起こしてしまうわけです。認知症にはいくつも種類があるので、それを簡単に紹介しておきます。まずは最も多くみられるアツツハイマー型認知症です。

私たちの脳は、年を取るごとに神経細胞が少しずつなくなっていきます。30歳から80歳までの50年間で、脳の重さは100グラム位軽くなるのですが、その一方で残った神経細胞からたくさんの連絡網が出て来て、失った神経細胞の代わりをします。ところがアルツハイマー型認知症になると、病気が起きてからたった数年で100グラム減少してしまうのです。これには対応する術がなくて認知症を起こすわけです。

認知症は以下のように分類されております。

  1. 名前や人の顔を忘れる、直近の行動を思い出せない、外出した時、道が判らなくなり自宅に帰って来れないなど記憶障害が主な「アルツハイマー型認知症」
  2. 脳梗塞、脳出血後に発症する「脳血管障害性認知症」
  3. 繰り返し出現する具体的な幻視を特徴とする「レビー小体型認知症」
  4. 比較的若い年齢で発症し、仕事や家事に無関心になる、同じ行為を繰り返す常同行動、万引きや立小便をするなどの社会的ルールを無視するといった行為の「前頭側頭型認知症」
  5. 内側側頭葉の海馬、偏桃体に嗜銀顆粒が蓄積することで、80歳を過ぎた晩節期に発症し、記憶障害の他、頑固になる、被害妄想、暴言、暴力的になるなどの『嗜銀顆粒性(しぎんかりゅうせい)認知症』

などがあります。

長谷川先生は『嗜銀顆粒性認知症』と自ら述べておられます。

老いることとは?

老いることは生きることであり、生きることは老いること。

それは「独自性」があり、「一回性」であり、「現在進行形で終わりがない」ということです。

誰でも年を取り、いずれ死にます。避けることのできない自然の摂理です。年を取ると認知症になりやすくなるのもそうです。何もできない身体になり、何も考えられなくなったとしても、生きていき、死へと向かっていくプロセスは進行するのです。行動する(doing)でなく、存在する(being)が老いの本質だと思います。 くよくよしても時間は均しく過ぎていきます。大事なのは、今日ある今を生きること。苦しいこともあるでしょうが、認知症が進行していても、生きているうちが花だと思うのです。つらくても朝は必ずきます。

  (長谷川和夫著:認知症でも心は豊かに生きている、中央法規より)